初夏を迎えたルンビニー 〜入居者のご家族から〜

管理者 相原あや子

 ルンビニーは三方を農地に囲まれています。つい先日その農地に水が引かれ、田んぼに変身しました。以前農業をされていた入居者の方もおられ、なつかしそうにながめておられます。かえるの合唱もにぎやかです。
 ルンビニーの庭の大楠もしっかり根つき、あちらこちらの枝から若葉が勢いよく伸び出してきています。浄瑠璃寺の岡田師からいただいた大賀ハスにも蕾が数個つき、私たちは今、開花の日を心待ちにしています。
 さて、今回入居者のご家族から次のような文章を寄せていただきましたので、紹介させていただきます。

 
 義母がグループホーム「ルンビニー」に入所して20日経ちました。
 私が嫁いで35年、若い頃の義母は気ままな娘さんのような人でした。それが晩年、痴呆が入り始めてからは、少しずつ頑固になり、行き先を告げずに出歩いては転び、怪我をして帰るといったことの繰り返しで、だんだん手に負えなくなりました。

 もうすぐ86歳になりますが、髪は黒く、足取りもしっかりとして、他人様にご挨拶をする時の彼女は、「普通の人」と何も変わりません。
 が、どうしても私の言う事は耳に入れてくれず、さらに徘徊はひどくなる一方ですし、一言とがめると三言くらい返ってきて、元来強い性格の人ですから、私のほうが疲れてきて、精神的にも限界に来てしまっていました。

 そんな時、グループホームの事を知りました。
 グループホームとは、入所している何人かが一家族のように行動を共にするところ、ということでした。
 ずっと預ける、ということにとても抵抗を感じていまして、自分達の老後のことも考えると出足が鈍る思いがしていましたが、このままでは私自身がダメになると思い、勇気を出して第一歩を踏み出しました。

 今までお世話になっていた病院のケアマネージャの方が、ルンビニーに問い合わせて下さったところ、とても感じが良かったと言って下さり、少しずつ気持ちが解かれていく思いがしました。
 そして責任者の方が面接に来て下さって、いろいろとお話を伺っているうちに、是非この方にお願いして、義母を預けてみようと思いました。

 とにかく条件が義母にピッタリだったのです。
 いつもスタッフの方がおられて気にしていて下さること。そして9人に7人のスタッフの方が本人の持っている特性を生かして、何か用事をさせて下さること。時間はかかりますが、傍らに誰かついていると何でも一応自分で出来る人ですから、本当に義母にもってこいだと思いました。

 ルンビニーとは、お釈迦様の生誕地を意味するそうです。昔から信仰心の厚い人ですので、これも最適です。ということで、去る5月13日、入所させて頂きました。

 1週間から10日に1度くらいは訪ねてみるつもりで、3回ばかり出掛けてみました。だんだん義母の顔が和らいできて、今はとてもいい笑顔をしています。

 「Kさん、塗り絵をご家族の方に見て頂いたら?」

スタッフの方に言われて、私も見に行きました。手先の器用な義母は上手に塗っていました。

 「ばあちゃん、上手に塗っとるがね!」

思わず口にする自分がいることが不思議でした。今までの私だったら、そんなことを言える心のゆとりはなかった。そう、義母と私は今、住む世界が違うんだ、とつくづく思いました。

 南向きの明るい部屋に、自分の家で使っていたものを持っていって、一歩部屋の外に出れば、台所があり、仏間があって、いつも誰かがそこにいてくれる・・・。本当に幸せな環境です。
 今は行くと、「遠いところをありがとう」と言ってくれます。仕事をしながらいつも頭の片隅にいた義母は、今楽しくルンビニーで生活している。そう思うと私も随分、気持ちが楽になりました。そして、「今度は何を持っていけば義母が喜ぶかしら」って思えるようにもなりました。

 義母との生活の中で、危うく私は自分を失ってしまうところでした。
 明るく義母に接して下さるルンビニーのスタッフの皆さんに感謝しながら、少しずつ昔の自分が戻ってくるのが感じられるこの頃です。
 相原さん(管理者)、スタッフの皆様、お世話になります。そして本当にありがとうございます。
 
 
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