「秋だ!祭りだ!運動会だ!」

管理者 相原あや子

 庭のキンモクセイがいい香りを漂わせ始め、ルンビニーの周囲の田も稲刈りが終わり、いよいよ秋本番です。松山は降水量が少なく、時間断水の心配も一時はありましたが、何とかそのようなこともなく夏を越し、秋を迎えることができました。
 10月5日〜7日は松山市の秋祭りでした。地区の役員の方が、「ルンビニーは今年新築ということもあり、7日におみこしを入れませんか?」と声をかけてくださいました。5日、6日の夜は、子供会によるちょうちん行列も来てくださり、祭りの気分が盛り上がりました。子供さん達に渡すおみやげのお菓子は、みんなで袋詰めし準備しました。暗闇にゆれるちょうちんの灯りに、しばし優雅な気分に浸ることができました。
 7日はいよいよおみこしが入る日です。お米、塩水、南天の葉など準備しお待ちしました。「わっしょい!わっしょい! 」の掛け声がだんだん近づき、大人、子供入り乱れて数十人、神主さんとともに庭内に入ってこられました。神主さんによる神事が厳粛に行われた後、男の入居者の方もかきてに加えてくださり、わっしょい、わっしょい。なつかしさのあまりか、涙ぐむ入居者の方もおられました。ルンビニーの玄関壁面のお釈迦様は、神様のお越しを歓迎して、きっとにこにことご覧になっていたことでしょう。
 10月12日は医療法人ビハーラ藤原胃腸科デイケアの運動会に、ルンビニーの入居者、スタッフも参加しました。幸い秋晴れの好天に恵まれ、気分も盛り上がります。選手宣誓など開会式と準備体操の後、いよいよ競技開始です。魚釣り競争、パン食い競争と競技が進みます。魚釣り競争では、ご近所のかわいい子供さんも参加され、応援や笑い声も一段と盛り上がりました。パン食い競争は、皆さん目の色を変え、おいしそうなパンをめがけて一目散。入れ歯がはずれそうになっても必死で頑張る人、ちょっとズルして手を使う人、ご家族の方も参加してみんなで楽しみました。お昼のお弁当を食べ、午後の競技へと進みます。玉入れ、鈴割り、お手玉リレーなど。玉入れ、鈴割りでは、入居者のNさんが数日かかって縫ってくださった玉が、大活躍していました。この日1日はみんな童心に帰り、気持ちのいい汗をかくことができました。閉会式で幕を閉じ、ルンビニーに帰りました。早速パン食い競争でいただいた各々のパンと冷たいジュースで、はい、お疲れ様でした。

 

ご家族からのお便り


 Wさんは今年の4月17日に入居されました。当日は皆さんに紹介され、「よろしくお願いします」と小声でご挨拶されました。現在74歳のWさんの痴呆にご家族が気付かれたのが約15年前ですから、60歳頃の発症となります。発症からの時間の長さに比例してかWさんの痴呆は重度で、食べること、排泄すること、着替えること、身体の清潔を保つことなど、生活全般にわたり声かけ、誘導、介助が必要です。入居されて、まずはご自分のお部屋を覚えていただこうとプランを立て実践し、時々は間違われますが、ご自分のお部屋はだいたい覚えられたようです。今は洗濯物を干すことやお掃除をスタッフの介助でできるよう、日々繰り返し行っています。Wさんはとても穏やかな方で、他の入居者とトラブルを起こすようなことは一度もありません。物静かで何か自分にしてもらったことがあると、誰に対してでも「ありがとう」とか「すみませんねえ」と言われます。茶道を長くされていたということで、道具を準備しお手前をやっていただこうとしたのですが、残念ながら茶道に関しては記憶が脱落していました。入居者の皆さんは童謡や唱歌がとても好きなのですが、Wさんも同じで歌うのがとてもお好きです。皆さんが歌われるような歌はどれも口ずさんでおられますから、子供の頃はよく歌われていたのでしょうね。また、般若心経などお経も諳んじておられます。幼少の頃、祖父母に育てられたようですから、その頃に自然に覚えられたのではないかと想像します。それではWさんの三男のお嫁さんからいただいたお便りを紹介させていただきます。

 
 

 「え〜、転勤・・・・・」
主人の単身赴任が決まった時、一番最初に頭をよぎったのは、お母さんの事でした。どうなるのだろう。気が重く、不安でした。
 6年前、週1回のデイサービスから始まり、今年の3月には毎日通い、月2回ショートステイし、迎えに行くようになっていました。
 発症当初は「少し変だなあ・・」と思いつつも、日々過ぎていたのですが、夏なのに毛布を掛け、大汗をかいて、閉め切って寝ている姿を見て、「たいへんだあ〜。きちんと向かい合わなければ・・。見て見ぬふりはできない時期がやって来た。」という実感でした。
 少しずつ痴呆が進み、タンスの中に食器を見つけるようになっていきました。慣れとは恐ろしいもので、痴呆が一段階進むと、その時は驚いてうろたえた事が普通の事になってしまいます。食器がどこにあるのか、見つける、隠す(本人は食器棚へ片付けている気持ち)のいたちごっこ。目を離すと寝てしまう毎日。
 主人の転勤が決まった時は失禁をするようになっており、起こしに部屋をのぞく事に気が重くなっていました。頭では痴呆ということは理解できているはずが、いざ現実を突きつけられると、納得していない自分がいるのです。子供は叱れば次から失敗が少なくなります。成長が進めば、あるところから退化が始まる・・。分かっていることなのですが・・。「言えば分かってもらえる」今でも捨て切れぬ思いかもしれません。
 4月、ケアマネージャさんから紹介を受け、ルンビニーにお世話になることになりました。幸運にも、入居者最後の1人でした。入居が決まっても、私の気持ちは「これでいいのだろうか?」と揺らいでいました。

私たち夫婦に怒られながらも、家にいる方がいいのではないだろうか?
おとなしい性格で、デイサービスでひっそり座っている姿が思い出され、大丈夫だろうか?
これから一人で、愚痴を聞いてもらえる主人もいないまま、介護ができるのだろうか?
ストレスが子供たちに向かっていかないだろうか?

楽になりたいと思う反面、そんなことでいいのか?という複雑な気持ちでした。

 でも、入居して1週間ほど経つと、お母さんの顔が穏やかになったのを見て、選択は間違っていなかったんだと思いました。無表情な顔に今では笑いが戻ってきています。また、体重も増えました。お世話してくださる方々に、感謝、感謝です。すごいと思うことは、「どんな調子でしょう?」と尋ねると、「こういう状態です。」と的確に答えてくれることです。それが、「よく看てくれてるな〜。」と、介護している家族でこそ感じることだったりするのです。いつも温かい見守りを感じます。
 歌を楽しそうに歌ったり、盆踊りをしたり、今まで見たことのない姿です。いや、こちらに余裕がなかったのでしょう。
以前、義姉がお母さんの手をさすりながら話し掛けていました。それを見て、「私には無理だ」と思ったのです。冷たい心の自分がいました。でも今なら、温かい心で向き合える気がします。

 これからどういう方向に向かっていくのか、予測がつきません。お世話をおかけすることも増えると思います。今後ともよろしくお願い致します。

 ルニビニーとの出会い そのご縁に感謝し 合掌
 
 
 
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