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行きつけの美容院で、その日は毛染めをしてもらいました。美容院の後、一度家に帰る間もなくスケジュールがありましたので、午後にある会に出席するため、朝から私のちょっとお気に入りの薄いベージュ色のスカートをはいて出かけたのです。美容院が終わって会に出席する間の時間、ルンビニーに立ち寄りました。ルンビニー内をスカートでウロウロするのをはばかり、更衣室でGパンにはき替えたとき、スカートの真後ろに数mmの黒っぽい染みを発見しました。石鹸でつまみ洗いをしても、ベンジンで拭いても消えません。
翌日クリーニング店にそのスカートを持参し、染み抜きを頼みました。「もし毛染めの液なら取れませんよ。」といわれました。数日後、取りに行ったスカートの染みは茶色っぽくなっているものの消えてはいませんでした。「これ以上色々すると、周りの生地が色落ちし、余計に目立つから。」とのこと。「この間もありましたよ。あなたのようなお客さん。でも、美容院には言えないとおっしゃっていました。」とクリーニング店のご主人。
私の行きつけの美容院は、郊外にある従業員共々3人の小さな美容院です。先生は自分の技術には自信を持った、明るくはっきりとした性格の方です。今回の染みのこと、説明に行こうか迷いました。迷いの原因は、10年間のいい人間関係が気まずくなるのではないか、そんなことが脳裏をかすめたからです。でも、話さないでいれば、美容院に行く度いつまでもすっきりしない自分がいることも想像がつきます。結局その足で、美容院に行くことに結論を出しました。そうすることに私をさせた最大の理由は、私も仕事では美容院の先生と同じ立場にあり、入居者やご家族がどんな些細なことでも疑問や不満を抱えておられたら、ぜひとも伝えていただきたい、そう思っているからです。
美容院に行き、先生に経過を説明しました。すると先生は気持ちよく私の話を聞いてくださり、「こんなことのために保険にもはいっているし、相原さんはこうして言ってきてくださったけど、黙って我慢しておられた方もあるかもしれないし、気をつけなければとみんなで再認識させてもらいます。私たちは言ってきて欲しいけど、言う方は勇気いるのよねえ。」とおっしゃってくださいました。「絶対毛染めの染みだという確証がないのに、気持ちよく認めていただきありがとうございました。」とお礼を言い、美容院を後にしました。「私の髪のことはこの美容院にお任せしよう」そう心の中で再確認しました。
この出来事は、ルンビニーの入居者やご家族が疑問や不満・不服を持たれた時、言いやすい雰囲気をスタッフ側が持っているか、改めて考えさせられる出来事でした。スタッフは理念に掲げているように、入居者の心を読み取って生活の支援や介護を行うよう日々心掛けてはいるものの、ご本人やご家族の立場とのズレは否めません。そこのズレを出来るだけ少なくしていくためには、「こんな事言っては・・・」とためらわれるような雰囲気をスタッフ側がかもし出すのではなく、些細なことでも聞いてみよう、こうしてほしいと言ってみようと思っていただけるように、スタッフが受容的態度で対応すること、これに尽きると考えます。そして、そのことに対する適切な対処は言うまでもありません。そうすることによって培われる信頼関係の蓄積が、「ここは私が安心して居られる所」、「私の大切な家族を任せておける所」になるのです。美容院での一出来事から、上記のようなことを再認識した次第です。ご家族の皆様、これからもご質問やご意見をお寄せください。私たちの気づきのヒントをお与えください。入居者の皆さんへよりよいケアを提供していくために。
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