忘年会

管理者 相原あや子

 
 街はもうクリスマス一色で飾られています。ルンビニーの居間にも子供の背丈ほどのクリスマスツリーに電飾がきらめいています。

  12月は忘年会のシーズンでもあります。ルンビニーでは忘年会とクリスマス会を一気にやろうと計画しました。場所は松山市の道後温泉の近くにある「かんぽの宿」。日時は12月14日12時から。
  この日を楽しい一日とするため、前もって企画会議?を開きました。出席者はGスタッフ、入居者男性Mさん、Oさん、もう一人のOさん、Sさん、途中から「何しているの?」とKさんも参加です。

Gスタッフ : 「今度14日に忘年会をしようと思うんじゃけど。」
みんな  : 「いい、いい。」と、大賛成。
Oさん : 「どういう人が集まるの?」

Gスタッフ

: 「内間だけでするけん、顔見知りばっかりよ。」
みんな : 「そりゃええなあ、気兼ねのうて。」
Gスタッフ : 「Mさんに司会してもらおうと思うんじゃけど。」
みんな : 「それがいい、それがいい。」と、またまた大賛成。


  当のMさん、最初は戸惑っていましたが、みんなに励まされ勇気百倍、「そんならやってみようかいなあ。」

 
  そんなこんなで企画書も出来上がり、14日当日を迎えました。Mさんの奥さんをはじめ、ご家族五名、ボランティア一名も参加していただけ、総勢三十名の大宴会です。サンタクロースの衣装に変身したMさんの司会で始まります。もちろん側にはGスタッフが寄り添っています。
  「私はMでございます。下手ながら司会を務めさせていただきます。今年も平穏無事に過ごさせていただきました。来年もみんな元気で過ごすことができますよう。」
  現役時代にはジュース工場の工場長を勤められたMさん、さすがです。従業員の前で話されていたこと、記憶のどこかに留まっているのでしょうね、きっと。それとルンビニーの日常生活の中でも、機会あるごとにMさんのこのような出番を作り、家長的存在感を自他共に持っていただくようにしている、その成果と思わせていただきます。

  「乾杯」の音頭はOさん。恥ずかしそうに前に出て、「今日はよいお天気です。急にこんなことをすることになり緊張しています。皆さん・・・かんぱーい!」ジュースとビールで乾杯です。すでにこの時、もうパクパクと食べている方もいますが、そこはそれ無礼講で。私の隣に座っているWさんが「ひえー」と声を出し、涙ぐんでいます。何に感動したのかと思いきや、刺身についているわさびをそのまま口にされていたのです。(ごめんなさい。私の支援不足でした。)急いでジュースを飲んでもらい一件落着。こんなハプニングもありましたが、しばらくは美味しいお料理を楽しみました。メニューも事前に打ち合わせ、お年寄り好みに一部変更していただいたのも良かったと思います。

  デザートのシャーベットをいただきながら、サンタクロースの登場です。スタッフの扮する二人のサンタさんが入居者一人一人にプレゼントを渡していきます。おしゃれなNさんには口紅とファンデーション、毎朝の散歩を日課とされているOさんには毛糸の帽子とマフラー、お花の好きなOさんとKさんにはクリスマス用の小鉢を。限られた予算の中で精一杯の心を込めたプレゼントに、皆さん喜んでいただけたでしょうか。

  さあ、次はカラオケ大会の始まりです。トップは司会役のMさん。お得意の「湯の町エレジー」からです。Mさんの奥さんも「島育ち」を歌って場を盛り上げてくださいます。氷川きよしの大ファンのNさん、「きよしのズンドコ節」を歌って大満足。「南国土佐を後にして」、「瀬戸の花嫁」と懐かしい歌を次々歌い、マイクを持たない方も口ずさんでおられ、しばしみんなで歌の世界に酔いしれました。中にはアカペラで97歳のTさんが、「たたみたたいてこちのひと〜」と誰も知らないお得意の歌を。また、女性Kさんの「トントントンカラリンと隣組〜」も入り、そして最後は、「幸せなら手をたたこう」で締めくくりました。

  美味しいコーヒーもサ−ビスしていただき、そろそろお開きです。男性Kさんの音頭で万歳三唱。「今日はめでたい日で、国旗掲げて祝ってください。バンザーイ、バンザーイ、バンザーイ。」背広姿が頼もしいKさんです。次は女性Mさんの「終わりの言葉」です。最初、「皆さん忙しいのに早速忘年会来てもらったらいいんですが・・・」少し戸惑っておられ、Gスタッフのフォローが入りましたが、それ以降、「楽しい忘年会が出来たことをうれしく思います。また、来年忘年会が出来たらいいと思います。ありがとうございました。」声楽をされていたMさん、今日もすてきな歌声をたくさん聴かせてくれました。最後の最後は司会者のMさんの「閉会の挨拶」です。「にぎやかに楽しく過ごせてうれしく思っております。ありがとうございました。」

  この日の忘年会に入居者Hさんはスタッフとお留守番でした。Hさんは車酔いをされるのと、食事以外は臥床されて過ごす時間が長く、しかもミキサー食を食べられているので、無理しないでおこうとの判断からです。この判断は間違っていないと確信するのですが、参加された入居者の皆さんお一人お一人を思い浮かべていくと、例えば痴呆度が高くしかもにぎやかな環境で不機嫌になるような方にとっては、ルンビニーで静かに過ごしているほうが良かったのではないだろうか。みんなで一緒に楽しく・・・とはついついスタッフの思いを優先させてしまったのではないだろうか。そんな課題をスタッフ側にプレゼントしてくれた忘年会でもありました。
 
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