【症例】
K.I氏 59歳 女性
初診: 2007年6月18日
主訴: 仕事の能率低下
職場の上司と一緒に受診する。患者は洋菓子を製造する会社に勤務し、温和な性格で、几帳面な仕事をする人であった。約1年前から菓子の製造について、出来上がった菓子が不出来で商品として使えない、予約を聞いても忘れている、釣銭を間違える、などの症状がみられるようになり、漸次増強してきた。家庭でも、調理に手違いがみられるようになった。もの忘れを自覚している。
【経過】
会社を退職。2008年春ころから、服薬管理不能、外出して帰れなくなる、他人の自転車に乗って帰る、トイレの流しに下着を詰め込む、などの行為がみられるようになり、日付、曜日などが分からなくなる。
【検査所見】
一般血液検査、ビタミンB12、甲状腺機能検査、血糖値には異常を認めない。長谷川式簡易知能評価スケール 22点
E大学精神科神経科へ紹介。各種心理学的テスト、時計描画テスト、MRI、SPECTなどによる精密検査。
【診断】
初老期アルツハイマー型認知症
【治療】
アリセプト 5mg 1日1錠
デイサービス 週4回通所
64歳未満の若年性認知症について厚生労働省の研究班が群馬県で初めて行った本格的な実態調査から、全国の患者数が31000人〜52000人と推計されることが分かった。旧厚生省研究班が1996年度に同県などで実施したアンケート調査での推計数より5000〜14000人増えており、認知症の若年齢化が進んでいることが判明した。今回の研究では、原因疾患については、脳卒中などで起こる血管性認知症が最も多く、ついでアルツハイマー病の順となっている。その他、脳腫瘍、パーキンンソン病、ピック病などがある。高齢者の認知症と比べ若年性認知症では、原因が多く、多様な対応が求められている。 |