脳血管性認知症の予防
脳血管性認知症は脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)が原因で起こる認知症です。脳血管障害と関係する肥満、心疾患、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症などの生活習慣病が脳血管性認知症の危険因子と言われています。塩分や動物性脂肪の多い食事、運動不足、喫煙や過量の飲酒などの生活習慣がこれらの疾患と関連することも知られています。最近、運動、知的活動などが脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症の両方の予防に役立つ可能性に注目が集まっています。
アルツハイマー型認知症の予防
アルツハイマー型認知症では、従来、高年齢や遺伝的因子が危険因子として知られていました。ところが近年、脳の病理学的研究からあつるハイマー型認知症にも血管病変が関与していることが分かってきました。肥満、脳血管障害、心疾患、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症などがアルツハイマー型認知症の危険因子であることが分かってきたのです。食事・栄養に関しては、飽和脂肪酸(牛肉や豚肉の脂身に多い)やトランス型不飽和脂肪酸(マーガリンやスナック菓子などに含まれる)の過剰摂取、およびニコチン酸(ナイアシン)、ビタミンE、葉酸(これは野菜、果物、豆類、植物油、魚に豊富に含まれる)の摂取不足が危険因子として挙げられています。逆に、低カロリー、低脂肪摂取、ビタミンC、ビタミンE、および葉酸の摂取が防御因子として挙げられています。また、魚の摂取量が多いことがアルツハイマー型認知症の防御因子になることも報告されています。
嗜好については、喫煙、長期の過量飲酒は危険因子と言われています。
近年、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の両者の予防で最も注目されていることは、身体運動や知的活動の効果です。週に3回以上の運動習慣や1日2マイル(3.2km)以上の歩行運動、読書やチェスゲームなどの知的な刺激をもたらす活動、楽器の演奏やダンスなど身体運動と知的活動が組み合わさった趣味活動がアルツハイマー型、脳血管性両者の認知症の防護因子であることが報告されています。運動による脳血流増加や、知的活動により神経ネットワークの強化などによるものです。
以上のように、認知症と生活習慣との関連性が明らかにされ、認知症予防の可能性が示唆されています。多様な危険因子、予防因子が認知症に関連するメカニズムの解明は今後の課題です。 |