症例
R.H氏 80歳 女性
夫との死別を機に不安、不眠などが出現し、近医でうつ病と診断され、抗うつ薬を投与し、症状は改善した。3年後、長女との同居後再びうつ状態となり、治療を再開し約2ヶ月で改善した。この7年後に、特に誘因なく、不安、不眠、食欲不振が出現し入院となる。HDS-R22点。
診断・治療:
入院後、抗うつ薬の投与により抑うつ症状は軽快したが、HDS-Rは19点と悪化していた。頭部MRIでは、海馬領域に中程度の萎縮を認め、大脳皮質にも側頭葉、頭頂葉などに萎縮がみられた。アルツハイマー型認知症へ移行した例と考えられます。
まとめ:
高齢者は若年者に比べ、うつ病が慢性化する比率が高いので、治療過程で認知症に移行していく可能性を十分に配慮しなければなりません。鑑別の困難な患者さんの場合は、暫定的な診断のもとに治療を開始し、経過を追って診断を確定していくことも有用と考えられます。 |