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厚生労働省の推計によれば、我が国の平成24年の認知症患者は462万人、65歳以上の人の15パーセント、さらに軽度認知機能障害者(MCI)400万人を加えると、実に65歳以上の人の4人に1人以上の人が、認知症またはその予備軍である。更に、団塊の世代が75歳になる2025年には、認知症患者は700万人と推計され、実に65歳以上の人の5人に1人が認知症になると言われています。寿命の延び、高齢化による認知症高齢者の急増により、認知症対策は今世紀における医療、福祉の最重要課題となっています。
外来診療をしていて、80歳になっても認知症にならない人には、共通した生活習慣があることが分かりました。これら各項目をみますと、どなたも脳にいい生活をしていることが分かります。
以下、その主なものを箇条書きにしてみます。そこには、認知症を予防するヒントがいっぱい隠されています。
・よく運動をする
・飲酒や喫煙が少ない
・趣味を持つ
・新しいことに興味を持つ
・何事にも前向きで積極的
・交友関係が広い
・積極的に外出する
・日記やブログを書く
・旅行をする
・いつも気持ちが穏やか
久しく認知症は予防できない病気とみなされてきました。しかし、近年の研究の進展により、認知症予防の可能性を示唆する多くの結果が報告されています。
これまでの研究により、修正可能な認知症の危険因子(それがあるために認知症になりやすいもの)が見出されてきました。
・生活習慣病(肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病)を良好にコントロールする
・運動不足を解消する(有酸素運動)
・飲酒、喫煙を慎む
・よい睡眠を取る
・人的、社会的交流を密にする
・魚、野菜中心のバランスの取れた食事をする
次号から、これら認知症予防の各項目について、その具体的な実践方法を述べてみたいと思います。
「健やかに生きる」「頭の老化を防ぐ」「認知症を防ぐ」ための方法として実行していただきたいのです。もう一度、ご自分の日常生活を見つめなおして、将来に不安のない、希望の持てる生活設計を描いてみたいものです。脳の器質的変化から認知症の発症までには何年もかかり、時には数10年を要することから、認知症の予防は、若い世代から始めなければならないのです。まさに「今でしょ」。
人生、いただいたいのち、どのように生き、どのように老い、どのように最期を迎えるかが私たちに与えられた課題です。老いや死を遠ざけるだけでは、よい生、よい生涯にはなりません。
(平成27年2月21日記) |